仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(う)13号 判決
原判決の認定した事実は原判示の如く被告人及その内妻中村トシに対する酒税法違反嫌疑事件につき、高橋事務官が中村トシに、反則事実を証明すべき物件として差押えた貸売帳を示し質問顛末書の承認を求めたところ、被告人はその傍において右貸売帳をトシの手から矢庭に掴み取り制止する高橋事務官の手を振り切つてその面前でこれを破り去り同事務官の公務の執行を妨害したというのであつて被告人は高橋事務官が右トシを取調べ質問顛末書を作成しその記載と同一内容なりや確認させる為、右貸売帳を渡したのに、トシの手から矢庭に之を掴みとつた所為及高橋事務官が之を制止した手を振り切つて貸売帳をその面前において破つた所為を高橋に対する暴行と判示したものであつて、公務執行妨害罪の手段たる暴行の事実を判示するに欠くるところはない。抑公務執行妨害罪の手段たる暴行又は脅迫は直接又は間接に公務員の身体に加えられれば足るのであるが、本件の場合において被告人が高橋事務官の制止する手を振切つた所為は直接身体に加えられた暴行というべく又トシから本件貸売帳を矢庭に掴みとり高橋の面前において破り去るが如き所為は間接に高橋の身体に対する暴行又は脅迫と解するのが相当である。